事大党員

次々と進化形を繰り出すアップル社、パソコンもデザインが独特で格好良いし、iPodは市場を圧倒的なシェアで支配している。凄い企業だと思う。国産品至上主義の自分でもmp3プレーヤーはiPod以外買う気がしない。でも何だか悔しいので、国産メーカーでiPodを倒せるプレーヤーを作ってください。これは切実な願いです。

というわけで通算15冊目。16冊目に時間かかりすぎてる・・・

iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048)

iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048)

この本はスティーブ・ジョブズがどうというよりも、アップル社がどのような企業なのかということに内容を割いている。筆者もアップル信者(別に深い意味は無い)であるようで、その辺は多少中立性に欠けるように感じられたが、それだからこそアップル社の面白さというのを十分に伝えられたと思う。しかし、途中に製品開発の細かい情報(PCのスペックの歴史など)を多く載せたりしていたので、その辺は読み飛ばした。それほど必要な情報であるとは思えないのだが・・・

数ある内容の中で特に興味を引いたのが、アップル社のキャッチコピーの章だ。非常に独創的で感覚に響くものが多い。その中でも面白かったのが以下のキャッチコピーだ。

those who use computers, and those who use Apples.

この考え方、差別化は実に見事だと思う。iPodもそうだと思うが、mp3プレーヤーはiPodとそれ以外の製品に区分されるような気がする。アップル社のブランドの確立に対する執念はすさまじいものであるようだ。それはデザインにも取り入れられているようで、確かにアップル製品のデザインはその他の製品に比べて際立っているように思える。日本製品があのレベルまでたどり着くことはできるのだろうか。まぁ私はそれでも国産品を買いますが。

総じて思ったのは、「アップル社は一貫性があるな」ということだった。どのような一貫性があるのかと問われれば、もやもやして答えられないが、譲らない一線が非常に高い、そういうところだろうか。世間を風靡した、あるいは現在進行形で時流に乗っている企業はそういった一貫性を持っていたように思える。随分前に読んだGEやスターバックスはその典型に思えた。

もちろん、本書はスティーブ・ジョブズの経営スタイルにも触れている。そうでなければタイトルが詐欺になってしまう。副題にある通り、ジョブズのスタイルは現場介入型であるようだ。一つ一つの製品に、経営者が自らチェックするシステム。日本企業のヒエラルキーを見ていると、有り得ないように思えるのだが、それがアップル社を成長させた理由のひとつなのだろう。

現場介入型というスタイルはアップル社を成功させた。ジョブズの非凡さによる部分が大きいと思う(本書には少なくともそうある)。しかし、そこで疑問に思うのが、ポストジョブズはどうすれば良いのかということだ。極端な話、ある日突然、ジョブズが交通事故に遭ったとして、そこからアップル社はアイデンティティーを維持し続けることが、品質を管理し続けることができるのだろうか。それは疑問である。

組織のあり方の理想形を巨大企業の人の再生産に置く私としては、個人スタイルの経営には不安を覚えるのである。ライブドアの名物であったホリエモンが逮捕されて以来、ライブドアはその輝き(光り方は大嫌いだったけれど)を失ったように思える。今川義元亡き後の今川家が呆気なく崩壊してしまったように、歴史的に見ても個人に頼る集団というのは将来的に崩壊に瀕する可能性が高い。

当然のことながら、アップル社がそのような事態に無用心であるはずがないだろう。一時期ジョブズを追放したくらいなのだから、優秀な人物がそろいにそろっているのだろうが、ことは精神的な問題でもある。ましてやジョブズ追放後に経営者が変わるごとに方針が変わったというくらいなのだから、その再来があっても不思議ではない。組織論に関しては、いつかまた別にまとめよう。