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2008年度2冊目・3冊目
今年は計画的に読書を進めたいと思う。去年は生協で手当たり次第面白そうな本を買っていたので、かなり作家に偏りが出た。その中でも特にはまったのが三島由紀夫で15冊程度を一年で読んだことになる。まだまだ読んでない作品がたくさんあるので、今年も三島文学を読み続けたいと思うが、それ以外の名だたる作家も忘れてはならない。
有名な作品だけを選んで読むというのも良いのだが(去年のように)、今年は少し読み方を変えてみることにした。一人の作家について、最低3冊は作品を読もうと思う。有名作品をかいつまんで読んでいくと、たまたまその作家の有名作品と自分の感性が合わないということも十分に考えられ、それ以降その作家の作品を読まないということでもあればあまりに不幸なことである。
最低3冊読めば、その作家の思考や傾向が見えてくることだろう。そこで気に入ったのであれば、さらに多くの作品を読めばよいし、気に入らなかったのであれば別の作家の作品を読めばよい。今年の読書は自分への効果還元をより強化するために、色々と策を講じることにしたい。とはいえ、それは年始に決めたことであるので、最初の数冊はあまりそれに沿っているわけではない。少し残念だ。それでは、読書感想文に入ろうと思う。
新年1冊目の内容がなかなか重いものであったので、次は現代物にしてみた。しかも読みやすい重松清。店頭に置いてあったのは大分前からであったので、気にはしていたのだが、どうも子ども向けなんじゃないだろうかという先入観を持っていたのでずっと買わなかった本だ。
- 作者: 重松清
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/06/26
- メディア: 文庫
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これは良い。その一言で済ませてしまっては、ここで感想を書く意味が薄れてしまうのだが、実に良かった。『流星ワゴン』などに比べると、大きく盛り上がる場面というのはほとんどない。筆者の半生を振り返る形で書かれていて、その時期その時期で価値がある内容になっている。筆者だけの内容ということは決してなく、必ず誰か他の登場人物が描かれている。彼らも非常に個性的なのだ。
このところ涙腺が特定分野に関して緩んでいるようで、この『きよしこ』でも少し涙した。それは小学校の劇での話で、本文には大きく関係がないのだが、劇の最後の垂れ幕には心動かされずにはいられなかった。話自体は珍しくもないはずなのに、どうしてかいたく感動してしまう。不思議な書き方をするものだと妙に感心した。さすがだ。
上にも書いたが、この本にはクライマックスというものが存在しないのではないかと思う。そういった意味ではインパクトに欠けるといえるのだが、短編であり長編であるという新しい(?)特徴が良く生かされていて、読む価値は十二分に認められると感じられた。重松清はそれなりに読んできているが、その例に漏れることなく良作であった。
そして、新年3冊目に決めたのは、タイトルがずっと気になっていたこの本。
- 作者: 吉本佳生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 単行本
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スタバをこよなく愛する私は本日のコーヒーをショートで頼んで、さらにリフィルをお願いするのである。すると、グランデと同じ量を同じ金額で楽しむことが出来るようになるのだが(リフィルは1杯100円である)、グランデを最初から頼んでしまうとホットコーヒーが冷めてしまう。だからサイズを小さいものを頼んでおいて、追加することに決めているのだ。
そういう視点に立つと、スタバでグランデを頼むことは愚かなことということになり、「経済学者はそういう楽しみを計算に入れないから困る」ということになると思っていたのだが、どうしてどうして。これは素晴らしい本であった。
本来ならば複雑な数学を利用しなければならない経済学を庶民の立場に立って解説している。数字は最低限に抑え、抵抗感を減らしている。価格差別や比較優位などの重要な考えも身近な例で説明してもらえるとわかりやすい。筆者の主張に沿って考えれば、確かにスタバではグランデを買うべきだ!となるのである。恐らく、グランデを買うことはないだろうが。
特に筆者自身が重要といっている比較優位の考え方はこれからの人生において大変役に立ちそうな考えであった。人間を絶対的な才能のものさしで測るのではなく、単位をそろえて能力を相対化すること。これは簡単なようで多くの場合見落とされてきたものではないだろうかと思う。考えてみれば当たり前、だけれどもそれを言葉と数字で論理的に説明されたことはなかった。だから本当の意味を理解できていなかった。強くそう思う。
経済学がわかっていなくても世の中の経済のしくみが良くわかる一冊だ。1600円と決して安価ではないが、それに見合った内容は認められると感じられた。経済学はやはり面白いものだ。