怖い電話・・・

「長谷川先生・・・実はあなたの担当のKのことなんですが、実はお母様の方から猛烈な抗議が来ているんですよ・・・もうすごい剣幕で『担当の先生は何やってるんですか!適当なことばっかり教えて、それが原因で落ちたらどうしてくれるんですか!家庭教師の先生に言われましたよ!』なんて言われちゃって・・・」

うわあああ!









なんてことになったらどうしよう?!ということを考えていましたが、実は見たことも聞いたこともない生徒の件でした。いやぁ、実に緊張しました。塾講師というのはいつどこでどのようなクレームが来るかわからないのが恐ろしいところです。

というわけで、無駄に引っ張ってごめんなさい。コメントくれた方々には本当に申し訳ないです。ちょっとネット小説っぽくしてみようかなと思っただけですw。

まぁ結局、中3のこの時期に、2人が退塾することになりました。正直に言って、バイト講師に受験生を預けるのはかなりどうかと思いますが、経営側としては非常に困るわけです。実際に生徒数は経営に関わってくる上に、この時期にやめられるというのはプライドに接触します。

2人のうち、一人の退塾理由は至極全うなものでした。その理由は、講師の都合による振替授業が多すぎるから。しかも最悪なことに、振替授業が重なってしまったのです。習慣付けという視点からも、一週間の決まった日に決まった授業を行うというのは、必要なことだと思います。それを講師側の都合でガンガン変えられてしまったのでは、生徒としてやってられないと思うのは当然でしょう。これは確実に講師側が悪いと思います。

しかし、もう1人は全く見当違いな退塾理由でした。その内容は、「塾に行っても全然成績が伸びない」「塾で勉強しているはずなのに、その時間に遊んでいる」と言ったものでした。その理由をミーティングで聞いたとき、講師室の空気が一瞬止まりました。

あまりに現実を知らなすぎる。前の日記に書いたように、塾とは学習機会の提供の場であって、決して無条件で成績が伸びる場所ではないのです。これは本気で勉強したことがある人ならば、疑う余地もないでしょう。その時点で勘違いをしているのです。

もし、集中していない生徒ややる気のない生徒を机に縛り付けて、「この問題が解けるようになるまでは、返さないからな!」というスパルタ方式を取っているのであれば、成績は伸びるかもしれません。けれども、そうじゃない。授業以外で、勉強を強制することは出来ないのです。

確かに、「勉強したいと生徒に思わせられないような授業はダメであり、講師側に責任がある」と言われれば、それも一理あるでしょう。しかし、自分たちバイト講師はそのような訓練は受けておらず、小学生などは授業を受けさせることが最優先されるような状況です。経験ゼロから始めて、そのレベルに達しろというのはほとんど不可能なのです。

そういった意味では、バイト講師を雇っている塾には行かせない方が良いというのは事実だと思います。高いお金を払う見返りとしては、あまりにそれが少なすぎる。




後者の生徒の退塾理由を、自分としては親の育児放棄だと考えています。その育児放棄の責任を塾に擦り付けているのではないでしょうか。

決して、良い授業を展開できないことへの言い訳ではありません。その部分を考えた上で、親の責任を問うているのです。

「塾に行かせているのに全然成績が上がらない」という苦情に関しては、塾は直接的に成績を上げられるわけではないという理由から、これはむしろ家庭で勉強させていないことが原因であると言い切っても間違いないでしょう。宿題をやれと言っても、やってこないのは保護者に責任があります。講師が無理やりにやらせても、小学生ならば答えを写してくるのも日常茶飯事です。それを防ぐためには、親が責任を持って勉強させるしかないのです。

それ以上に、「塾で勉強しているはずなのに、その時間に遊んでいる」という方が問題です。包み隠さず言えば、「阿呆か!」の一言で済むでしょう。塾は学校ではないのですから。そもそも、「塾に行くよ」と親に言っておきながら、その嘘の時間に遊びに行くというのは、成績如何ではなく、態度や人格の問題です。

学校には、生徒の人格形成の仕事がありますから、その責任は一部負わなくてはならないでしょう。それでも、基本的には態度教育・人格教育は親の役割です。最も子どもと一緒に時間を過ごすのは、親なのですから。だから、嘘をつくつかないの問題は、家庭内の問題であり、外に持ち出すというのは勘違いも甚だしいと言わざるを得ません。

これは、特に最近問題になっている、いじめ問題にも通じるものがあるでしょう。いじめ問題に関して、報道では教育委員会や学校の責任ばかりが注目されています。確かに、それは事実でしょう。学校側は集団生活を目にしているわけですから、実際にそのような現場を止められるのは学校側の人間以外にありえません。そういった意味で、いじめを止める責任は学校にあります。それを助長する教師がいるというのは、論外です。

しかし、いじめの予防という意味では、学校よりも家庭に責任が課せられるのではないでしょうか。いじめというのは集団の中で起こりがちですが、集団も結局は個人が集まって形成されるのです。群集心理というものもありますが、いじめグループには大抵リーダー格がいるものです。その人の意思がいじめに大きな影響を与えるのはほとんど間違いないでしょう。

例えば、かつあげをしている生徒の親は、自分の子どもが不自然にお金を使っていることに、疑問を抱かないのでしょうか。いじめられている生徒の親は、子どもの変化に気付かないものなのでしょうか。これは、教師がいじめに気付いていないのと、同じレベルではないでしょうか。

結局は、親の無関心というものが、問題の核心にあるというのは間違いないと思います。「塾に行くといって遊んでいる」と言うのであれば、「嘘をつくんじゃない」と咎めるのが親の役割なのです。こんなことはわざわざ偉そうに言うことではありません。ただ、実際にその常識を備えていない、そして責任を認めようとしない親が増えているのは事実だと思います。

後者の親には、「あなたの教育が悪いんでしょう!」と言ってやりたいところですが、そんなことは当然言えません。そんなことを言ってしまえば、こちらのクビが飛びます。塾にも迷惑がかかります。

自分に出来ることは、授業を頑張るしかないのです。「家庭内」の問題に塾が口を挟むことは出来ません。だから、少しでも良いから、生徒が授業や勉強を負担と感じなくて済むように、努力していかなくてはならないと思っています。「社会は暗記科目だから嫌い!」という生徒はたくさんいますが、短い時間内で社会の面白さを少しでもわかってくれれば、それ以上に嬉しいことはありません。

一度、中3の生徒が、歴史に関して質問に来たとき、中学の範囲を超えて教えたことがありました。自分としてもいっぱいいっぱいだったのですが、何とか説明しきることが出来ました。そのときに「先生、よくわかりましたよ!もう完璧です!」と言ってくれたのを今でも鮮明に覚えています。

上手く教えることが、塾講師の責任です。だから、その責任は果たさなくてはならないと思っています。その責任を果たしてからようやく、親に責任を問うことが出来ると思います。偉そうなことを言うからには、相手に文句を言わせないくらいでなくてはならない。今回のクレームを受けて、少し頑張ろうと思った自分でした。