電話が怖い・・・

自分は元々顔が見えない電話というものが好きではないのですが、塾講師をやっていると嫌でも電話に関わらないわけにはいかないのです。しかも頻繁に・・・さらに相手は顧客であると同時に親であるというのが大変なところ。立場としてはこっちは基本的に頭を下げっぱなしです。学校ならば、まだ「生活態度に問題がありますよ!」とか強気な態度に出ても、「じゃあ退学します」とは親もなかなか言わないし、成績も最近の親は学校に期待してないきらいもあってか、あまり気にかけません。でも塾は違う。通わせる目的が成績を上げることだから、成績が上がらない、意味が無いと判断すればすぐに退塾してしまうわけです。まぁ高いお金を払っているのだから当然といえば当然です。

しかし、それでも勘違いしている親が多すぎる。勘違い親はまるで宗教のように「塾に通わせておけば大丈夫」「塾に行かせれば無条件で成績が伸びる」と信じています。これは塾側としては実に困ったことです。塾はあくまで学習機会・理解の機会の提供の場であって、成績を上げる方法は生徒自身が塾外で(場所の話ではなく)勉強するほか無いのです。だからどれほど授業を受けていても、演習をしないと成績は伸びないし、意味もない。夏期講習で一日中講習を入れて、復習をしないのでは意味が無いのと同じです。

特にこれは小中学生の理科・社会に顕れます。小中学生の理科・社会は基本的には暗記です。暗記が何よりも大事であって、理解は暗記の補助的な存在です。塾講師が提供できるのは、補助としての理解と、せいぜい語呂合わせなどであって、暗記という行為自体は全て生徒にかかっているのです。中学受験を経験した人ならばわかると思います。英語でも、授業中に「"prepschool"は"塾"と訳します」と教えても、授業後に復習しなくては出来るわけがないのです。

「お前の授業は質が悪い、だから理解しにくくて困る」というような類の苦情であれば甘んじて受ける覚悟はあります。授業の質は塾講師の提供する最大のものであり、商品なのです。欠陥商品に苦情が入ったとしても、こちらとしては誠心誠意対応して、改善するよう努力するほか道はありません。それでも納得してもらえなくて退塾すると言うのであれば、引き止めることは出来ません。




先日、4時間連続(途中で休憩はありますが)のロングラン授業が終わって、講師室で一息ついていると、社員の先生が電話対応していました。その電話相手が誰だか自分にはわからなかったのですが、「申し訳ございません」を繰り返し、「担当の者には厳しく指導しておきますので…」と何度も言っていました。恐らく講師が不手際を犯し、保護者から苦情が入ったのだとその時は思いました。そして(もしかして「担当の者」って自分のことじゃないだろうか・・・)ととんでもなく不安になりました。なので、その電話が切れる前にそそくさと逃げるように塾を去りました。

翌日も授業が入っていたので、当然塾に行きます。その時も(昨日の電話のことで何か言われないだろうか・・・)ととても不安な気持ちでした。心当たりは無かったのですが、無いからこそ、気づかぬところでミスを犯したのではないかと不安になるのです。

授業前の定例(と言っても時々開催されませんが)ミーティングがあります。そこで一日の授業の確認を講師たちで行い、それからそれぞれの教室に向かうのです。昨日の電話を受けていた社員の先生の顔は陰鬱な様子でした。明らかに電話の内容がそうさせたに違いありません。

その日は特に確認事項は多くなかったので、ミーティングで話し合うべき内容はものの3分ほどで終わりました。(良かったー電話はどうやら自分じゃなかったみたいだ)とほっとしたのもつかの間、その先生が重い口をついに割ったのです。

「実は昨日・・・中3の生徒の親御さんから電話があったのですが・・・」

・・・自分の担当学年だ。。。

続きは大学から帰ってきてから。