わかっちゃいるけど難しい。

喧嘩したとき、先に謝るのはなかなか難しい。意見が対立したとき、相手の意見を素直に受け入れるのはなかなか難しい。間違いに気付いたとき、その場でそれを認めるのはなかなか難しい。

自分ではわかっていることが多い。自分が間違っているということを。ただ、意地を張ってしまって、自分の非を認められない。誰しもそんな経験があると思う。最近、自分は出来る限り、つまり気付いた限り自分の非はその場で認めるようにしている。もちろん、出来ないこともあるけれど。

今日は、母と弟が喧嘩したそうだ。弟は来年度から高校3年になり、本格的に受験生になっていく。彼は神奈川では進学校としてなかなか有名な聖光に通っている。中学受験の結果でも、中高の模試の成績でも自分を大きく上回る上に、サッカーまで自分よりもはるかに上手い。ただ、ひどく幼い。

そんな彼も、受験は避けて通れない道だ。特に将来の夢というものもないらしく、とりあえず東工大を目指すと言っていた。それはそれで良いことだと思う。東工大のレベルは高い。それは文系の自分でもわかる。だから東工大を目指しておけば、途中で何かやりたいことを見つけたとしても、余程のことがない限りはつぶしが利くんじゃないかと思うからだ。

しかし、ただ明確な目標もないのに目指すには、東工大はつらすぎるんじゃないかとも思う。レベルが半端ではない。「どうしても行きたいんだ」という気持ちがあれば、頑張り続けることが出来るだろう。だが、それがない。1年間だが、長い勉強を続けられるかと訊かれれば、自信を持って答えることは出来ないだろう。

彼は早稲田のスポーツ科学部スポーツ医学科も進学候補に入れている。スポーツトレーナーに興味があるらしい。スポ科はレベルとしては、今のところは十分射程圏内にある。高2の模試なので、信頼性に欠けるかもしれないが、A判定が出ている。この調子で行けば、普通に勉強するだけで合格が狙えるかもしれない。勉強量が東工大とは大きく違ってくるだろう。

母は、そんな弟を見て、危機感を抱いている。まず第一に、スポーツトレーナーという職業選択をあまり好んでいない。将来性が確かではないからだそうだ。それだったらレベルも高い東工大を狙って、経営システム工学に進んだ方が人生にとって確実だということらしい。

その違いが今回の喧嘩の火種だった。弟はとりあえず現在の第一志望に早稲田のスポ科をあげたいと主張した。母はそれに反対し、東工大を目指すように主張した。

当然議論は平行線。それは致し方ないことだ。立場が違えば、意見が食い違う。しかし、それをいつかはまとめなければならない。出資する親と、将来を決める弟。このどちらが欠けてもいけないのだ。

何故議論は進まないのか。それははっきりしている。お互い相手の話を聞く気がないからだ。自分の部屋に愚痴を言いに来た母にそれを指摘しても、理解していながらも認めない。この場合の「聞く」というのは、相手の意見を、自分の意見を交えずに、一つの考えとして尊重し、自分の中に取り入れることだ。話を聞きながら、頭の中で「でも・・・」と反論を考えていたのでは「聞く」ことにはならない。

母は「聞く」気はなかったようだ。よくよく聞けば、ただ単に弟に東工大を目指して欲しいということを説得するだけが話し合いの目的だそうだ。きっと弟もそうだろう。「自分の人生だ」ということに固執し、親の意見を聞こうとしていない。自分には両者の気持ちがよくわかる。受験生としての生活を一応終えているので、これから受験を向かえる弟の気持ちも、将来を心配する親の気持ちもわかる。だからこそ難しい。

眠いからあとはまた明日。