沖縄読書編

沖縄読書シリーズ、3冊目に入った。歴史の分野では「琉球時代」「沖縄時代」「沖縄戦」「沖縄現代」と設定した中で、今回は「沖縄戦」がメインだ。日本国内で行われた最大の陸戦地、沖縄。軍人を含めて当時沖縄在住者の4分の1が亡くなったという沖縄戦。長い沖縄の歴史の中でもとりわけ悲劇的な時代だ。沖縄戦に関しては3冊読みたいと思っているが、最初は概説書としての本が欲しかったので↓にした。

戦争と沖縄 (岩波ジュニア新書)

戦争と沖縄 (岩波ジュニア新書)

岩波ジュニア新書なので、大人であれば1時間半もあれば読み終えることが出来る。この本の後ろにも「沖縄修学旅行に便利」と書いてあるが、まさにその通りだ。中学生でも読めるように簡単な言葉で書いてあり、読んでいて苦しさを感じさせない。また当時の人々の日記などをそのまま載せていることも多いので、より入り込みやすくなっている。

第一章では「ひめゆり学徒隊」について書かれている。最初に生き残ったひめゆり部隊の人の手記が載せられており、これを読むだけでも鳥肌が立った。これは決して誇張表現でも比喩でもなく、そのままの意味だ。本当に寒気がするほどの恐ろしさを感じさせる、迫ってくるような文章だ。

「戦争はいけません」、そんなことはわかっている。人が死ぬことが良いわけがない。しかし、どこまでそれを私達は自分達の現実として考えたことがあるだろうか。「戦争なんて起こるはずがない」、そう考えている人が大半のはずだ。そんな私達が「戦争は悲惨なものです」とか「戦争は繰り返してはなりません」などといっても、自分自身ですら腑に落ちない。

「これがかのひめゆりの塔です」といわれたとき、どこまで想像力を働かすことが出来るか。教科書の記述からでは決してわかることのない「現実」。それを「現実」と呼ぶことすら許されないだろうが、具体的に知ることで想像はより現実に近付くことが出来る。「ひめゆり部隊の人たちは、沖縄戦に巻き込まれてまだ若い女生徒だったのに命を落としたのだな…」、それだけでは東京に帰って3日も立てば何も感じなくなってしまう。

その塔に祭られている人は、どんな人生を送り、どのような現実を経験し、どのようなことを考え、どのような死を迎えたのか。それを考えることなしに史跡を見ても、それは「観光」に過ぎない。知識以上の何ものももたらさない。

そういった意味で、この本は読んでおく価値が十分ある。戦場に人がいたことが理解できるからだ。もし少しでも、沖縄戦の史跡を回りたいと考えている人がいたら、少なくともこの一冊だけは勧めたい。そんな書かれ方をしている。

沖縄戦に関して書いてあることは、タイトルのわりに最初の3分の1程度だ。残りは琉球の歴史、日本編入後の沖縄の歴史、戦後沖縄の歴史について触れられているため、これだけで沖縄の歴史が一通り学ぶことが出来るようになっている。そういった意味でも、沖縄を訪れる前に読んでおきたい本である。沖縄の特色というのが歴史的な視点からより深く理解できることだろう。