面接恐慌

今日は朝からインターンの面接に行ってきた。古賀がインターンしておいた方が良いよというので、それならばと受けにいったわけだが、大変なことになった。社長とインターンの学生で構成されるという変わった会社で、社長からの厳しい言葉が飛んでくるのが特徴らしい。そこでビジネススキルを身につけ、皆エリート業界に羽ばたいていくという。

そんなわけで厳しい言葉をいただいてきた。人生でこれほど直接的な言葉で罵倒されたのは初めてではないかというくらいのレベル。しかし、意外と凹んでいない。ゼミ合宿でもそうだったのだが、どれほど心に突き刺さる言葉であっても、それが真実であり的確であるのならば、素直に納得できるのだ。そして、見事に納得させられて帰ってきたというわけである。

会社に入って聞いたその社長の第一声は

「本当にお前らは頭悪いな、お前らの世話なんてこれだから嫌なんだよ」

噂はどうやら本当らしい。容赦ない言葉どころじゃない、悪意を持って罵倒しているのではないかと思えるくらいに厳しい叱責。しかし、インターン生たちはへこたれる様子はない、日常の一部分として、当たり前の部分として受け入れているようだ。映画「フルメタルジャケット」のハートマン軍曹を想像してくれれば良い。これは厳しい面接になる確率100%だ。実際は厳しいどころではなかったのだが。

11時半になり、面接が始まった。最初は志望動機について。社長改め軍曹はかったるそうに椅子に座り、ノートを開く。大企業の面接では味わえない醍醐味がここにはある。昨日から必死に考えた志望動機を順を追って説明していく。このときは清水の志望動機を聞いていたことが役に立った。当たり前のことではあるが、論理を組み立てるように説明しなければならない。これが意外と難しい。

しかし、志望動機については自信があった。ここ数ヶ月考え続けてきたことをわかりやすい形に直すだけだ。志望動機は3つの要素から構成されており、(1)大学院にないものを補う、(2)世界を広く保つ、(3)就職活動対策である。

(1)はそのままだ。大学院は基本的に研究のために通うものであるため、自己責任の世界である。修士論文を出さなければ退学になるだけだ。しかし、社会はそうではない。どの企業で働こうとも、企業に勤めている以上は他人との間に責任が発生する。それは顧客であるかもしれないし、同僚であるかもしれない。とにかく、責任を果たすことが求められる。大学院の2年間、そういった世界と切り離されて生活するのは今後のことを考えれば、好ましいことではない。そういった意味で、社会とつながるために希望した。というわけだ。

(2)は(1)とかなり似ているが、範囲がもう少し広い。これまで自分は「教員になる」という強い信念を持ち、そのために大学時代を過ごした。それは大きな意味があったと思うが、逆に言えば関係のない世界については何も知らないのである。これもまた将来設計を考えたときに、視野が狭くなりすぎて好ましくない。だから、視野を広く保ち、様々な価値観を受け入れられるように、大学院時代はこれまでやってこなかった様々なことに挑戦したいと考えている。その一例がインターンシップであった。

(3)は実際的だ。就職活動を行うにあたって、自分には目に見える業績が全くない。また、ビジネスと離れた生活をしていたため、ビジネスで使う論理的思考力やディベート力に欠ける。金融業界や商社業界を志望しているので、それらのスキルをぜひ身に付けておきたい。

これが志望動機である。この時点では、軍曹からの評価は高かった。どうも近年の学生は、理想も趣味も持たないらしい。「意味のない」受験勉強ばかりに気を取られてきたため、すべてが実学的で教養に欠ける。というのが軍曹の意見だ。その点で理想を持ち、その実現のために努力していることは評価に値する。そういうことだった。面接に来る学生のほとんどは、上の自分の志望動機の中で(3)しか言わないらしい。

ここまではこれ以上なく良好だった。しかし、ここから地獄が始まる・・・

次に聞かれたのは業務内容について。ポータルサイトを運営しているのだが、その感想を求められた。思った通りのことを答えると、「ダメだお前は・・・」。この評価のだだ下がり具合は昨夏からの金融恐慌の発生と似ている。あまりにも突然、そして一気に崖を下る。これまでまともな面接をしたことのなかった自分は、そもそも面接の作法を踏まえていなかった。言われてみれば当たり前のことが出来ていなかったのだから、仕方がないと言えば仕方がない。

それからはもう言うこと言うことが的を外れる。最初の視点が間違っているのだから当たり前だ。その度に厳しい言葉が飛んでくる。凹んでいる暇などない。飛んでくる言葉の何割かは何のことだかわからない内容で、ほかは「ごもっともです」というものなのだから。だから特に傷ついたりはしない。傷つくのは、指摘されたときの言葉遣いなどではなく、指摘されたことで自分がどれほど愚かかを思い知らされたからだ。そういった意味ではショックであった。

初見の内容を指摘されたことについては、「なるほどそういうものか」となるが、言われてわかってたことについては「どうしてそんなに簡単なことが出来なかったのか」となる。やるべきことは山ほどあるということがよくわかった。大学院にこもっている場合ではない。

いつになるかわからないが、次の面接はきっと上手くやれるだろう。面接とはこうあるべきという基本的な像を示してもらえた。それだけでも十分な収穫だ。インターン紹介会社からのメールの「志望動機と目的意識に重点が置かれます」という言葉が真実であり、かつ志望動機と目的意識が自分の業務内容に関する無様な回答を上回っているならば合格をもらえるだろうが、そんなことは恐らくない。だから次のインターンに向けての練習として割り切って、頭を切り替えていこう。

しかし、あの会社でインターンを続けている学生は偉い。よほど精神的に強いか、ドMでなければ耐えられないだろう。面接でどれほど言われても耐えられたが、それが毎週訪れるとなれば・・・考えただけでも恐ろしい。万が一そこでインターンできたら胃薬を買わなければ。まぁがんばろう。次の面接予約ももう入れた。インターン実現に向けて邁進すべし。