四方の海・・・

色々あった日だった。別の言い方をすれば何もなかったのだが、どうでも良いことがたくさんあった日だった。たまには普通の日記も良いものです。

朝、頑張って起きたつもりが、うとうとしているうちに9時になりました。せっかく炊飯器を8時にセットしていたというのに、過熱されすぎて多少ぱさついたご飯とキムチだけというさみしい朝御飯を済ませ、大学に向かいました。ここでも実家の有難みを再確認します。母上様、20年間もお疲れ様でした。大学では特に何もなく、授業中に読書を進め、少し寝ました。

苦痛に耐えて、4時間連続で出席し、家に帰ります。コナミに行こうか迷ったのですが、結局行かないことにして、夕飯を食べて帰るか作るか迷ったのですが、結局食べて帰ることにしました。家の近くの大盛りで有名なえぞ松でホイコーローを食べ、買い物しようかしまいか迷って何も買わずに、でもローソンでエクレアを買って食べながら家のドアに鍵を差し込みました。

しかし、鍵を差し込んで気がついたのは、ドアが開いていること。どうやら清水が帰っている様子。そーっとドアを開けると、案の定そこには清水のスニーカーに加えて女物のサンダルがあるではありませんか。前にこの状況で堂々と帰ったら清水にこっぴどく叱られたので、様子を探りつつゆっくりと階段を上がります。

上の階について、清水の部屋の方を見てみると、ドアはかすかに開いていて、電気は消えています。もちろん、自分の部屋には誰もいません。この状況で考えられるのはいくつかあります。最悪の状況でないことを祈るばかりです。こちらからドアを開けるわけにはいかず、一人で気まずい時間を過ごしていました。

新聞を読みながら、30分ほど部屋にいたら、ドアの向こうから清水の彼女が現れました。何度か電話が鳴っていたのに反応がなかったことから、きっと寝ているのだろうと予想していたので、特に驚きでもありませんでした。でも驚いたのは、清水がいなかったことです。お前いねぇのかよ!

これまで何度も会っているので、別段気まずいなんてことは特にないのです。最初に会ったときは、いきなり清水がいない状況だったので、気まずいことこの上なかったのですが、気さくで賢い人なので助かりました。すると、彼女は開口一番

「寝てた・・・」

「あー、寝てたんですか。どうりでやけにリアクションがないと思いましたよ。」

自分は彼女に対してはなぜか敬語なのです。まぁ年上ですし、雰囲気的にお姉さんの、いやお姐さんのような感じの人なので、仕方ないのです。年上とか学年上には必ず敬語を使う、これ自分ルールです。そこから意外なことにお話がスタート。確か話し始めたのが7時半くらいでしたでしょうか。

話してたのは主に清水と彼女のバイト先のコナミスポーツについて。支店長とかマネージャーが頭悪いとか、新入りは物覚えが悪いどころかバカでどうしようもないとか、フロントは働かないオーラ出しすぎとか・・・基本的に悪口です。もし、彼女や清水が単なるバイトの古参で偉そうにしているだけならば、イタイ話以外何物でもないのですが、清水と彼女は実に良くバイトしているのです。だから、悪口ではなく正当な批判と言ったほうが良いでしょう。

言っていることは一々最もで、自分のバイト先との共通の良くないところもたくさんありました。だからといって簡単に直る話じゃないのだけれど・・・でも驚いたのはそんなことではないのです。清水の彼女は実に偉いと思いました。

彼女は、誰よりも頑張っているようで、誰に何を言おうとも正当化されるほどに働いているそうです。先月は31日あった中で29日シフトに入るという鬼のような働きぶりで、しかも真面目に仕事をこなします。でも、それだけじゃなくてちゃんと人を見ているのです。清水の悪いところをしっかりと見ていました。

清水を知る人ならばわかることとも思いますが、結構彼はばっさり物事を判断します。もちろん、正しい主張をしているので、清水は何も悪いことを言いません。まぁプライベートな面では実にだらしのない男ではありますが、少なくとも責任ある仕事をこなすときには一生懸命やります。それが当たり前です。

でも、当たり前だと思っているからこそ、清水はだらしない人が許せないのでしょう。掃除をしっかりやらないとか、備品の管理が良く出来ないとか・・・当たり前のことが当たり前に出来ない。それにイライラするのは誰でもそうでしょうし、現に清水の彼女も怒っていました。

清水はそこで、はっきりと怒ります。何をしているんだ!と。確かに、何してるんだか・・・というような話なので、清水が切れるのも当たり前。しかし、厳しすぎると彼女は言いました。

正しいことを主張して悪いことなどありませんが、そこは難しいところだと思います。言い方の問題というのはありますし、仕事を仕事と割り切っているからこそ、下手な情をかけることなく怒れるのでしょう。自分には出来ないことであり、そういう厳しさを持つ人は甘やかす人よりは遥かに必要だと思います。

でも、言われた方が怒られて素直になるかと言われれば、それはそれで別問題だとも思います。どれだけ怒っても、本人がそのダメな点を自覚して直そうと思わなければ意味がないわけで、逆に「何あいつ」と思われたら意味がないどころかマイナスです。そりゃもちろん、ちゃんとしない方が悪いので、怒る方に非はありませんが、人間が不条理な感情を持つ生き物である以上はその点を避けて通ることは出来ないのです。

そういうことを、彼女ははっきりと指摘しました。一見、合理的に見えるやり方でも、一点の非のないやり方でも、そこに感情が介在する限りは最も良いやり方とは限らない。理詰めでやれば良いわけではないと。

あぁ、この人は本当に頭が良いんだな・・・と感じさせられました。そんな清水に時々イライラするなんてこともはっきりと言ってましたし、今まで出会ったことのない人だと思いました。はっきりと物事を指摘するけれども、しっかりと相手のことを考えている、こういう人のことを賢いというのだろうと思います。

そんなことを話しているうちに何と1時間半も経っていました。驚いた!こんなに話すとは思ってもみませんでした。ところで、彼女は最後に清水は今日清水母と会うために出かけたよと言っていましたが、確か今日はバイト先のお客さんと夕飯を食べに行くと(そして食後は…)と高らかに宣言していたような気がするのですが・・・

でもそんなことを言うわけにもいかず、きっとお母さんに会っているに違いないと思い込むことにしました。少なくとも自分には関係ないし・・・と痛む心を無理やり納得させ、口を閉じました。ごめんなさい。。。大丈夫、清水を信じよう!

そんなこんなで、銭湯に行ったりして今に至ります。色々あったようで何もなかった今日という日は、そろそろ終わろうとしています。明日も良い日になりますように。