続・CL決勝戦

アーセナルディフェンスは、プレミアでもそうなのだが、実に危ない。ディフェンスで3人いるにも関わらず、裏を取られることなどざらにある。元イングランド代表のキャンベルなどがいるにも関わらずである。そしてこの試合でもそうだった。

バルサのサッカーはロナウジーニョの驚異的なスルーパスをFWが的確に捉えて得点を挙げるのが一つのパターンとしてある。もちろん、ロナウジーニョがあのタイミングの取れない独特なドリブルで抜き去っていくということも山ほどあるのだが、やはりFWとの連係プレーは美しく、それに勝るものはないと思う。準決勝のミラン戦において、どこにもスペースがないような状況でも、そこにパスを出す選手がいて、それにあわせる選手がいる。

ミランディフェンスは世界屈指の固さを誇ると思うが、それですら破られ、その1点に泣いたのだ。ましてやアーセナルならばどうなることやら。。。

と思ったその瞬間。ロナウジーニョからエトーへスルーパス。このときもアーセナルディフェンスはは3人フラットに並んでオフサイドに備え、飛び込んでくるのはエトーだけ(ジュリーはどうかな…)だったのに、見事に裏を取られた。しかもエトーが受けたのはペナルティエリアぎりぎり外で、レーマンの判断も難しくなる。ペナルティエリアに入ってくれば、キーパーは迷わず飛び出していくことが出来るが、外となるとハンドを取られてカードが出ることがある。しかし、レーマンは迷わず飛び出した。エトーレーマンの二歩手前でトラップをし、ワンステップでレーマンをかわそうとする。そこに突っ込んでくるレーマン

本当にギリギリの勝負だ。あと一歩内側ならば、レーマンが弾いていただろう。あと一歩外側ならば、エトーは余裕を持ってレーマンをかわし、点を挙げていただろう。しかし、その中間で激突した。

エトーがかわす方が一瞬速かった。ここでも一瞬が勝負を分けてくる。ボールはレーマンの左横へ抜けていく。後は体勢を整えて確実にゴールにボールを送り込むだけだ・・・だが、レーマンの手がエトーの足に引っかかった。エトーは体勢を崩し、前方へと吹っ飛んでいく。ボールは流れている。そこにジュリーが詰めてきて、シュート。バルサの先制だ。と思われた。

しかし、バルサの得点にはならなかった。審判はアドバンテージを取らずに(あるいはジュリーがオフサイドだったため、アドバンテージを取った)、レーマンエトーへのファウルを取った。当然のことながら、レーマンは退場処分だ。しかし、PKではなく、FKになる。まだ点が入るかどうかはわからない。先制点をバルサが挙げれば、そのままバルサの流れになって試合は決まっていたかもしれない。しかし、レーマンが退場してでも防いだ先制点だ。ここでアーセナルの選手はどう動くか。

当然、退場したレーマンに変わって、キーパーを入れなくてはならない。となるとフィールドプレイヤーの中から一人交代選手を選び、交代させなくてはならない。それはピレスだった。ピレスももう長い間アーセナルに尽くしてきている。プレミアでの優勝にも幾度となく貢献してきた選手だ。そしてこの試合は何よりも重要な、選手生命をかけても闘いつくしたいと思えるような世界最高峰の試合だ。ピレスもだいぶ年を重ねているとは言え、この試合に出られることを一生の誇りとしていたことだろう。しかし、だからと言ってアーセナルが負けてよいわけではない。ここは勝負の世界なのだ。

うつむきながらピッチを去るレーマン、不完全燃焼のピレス。二人ともここでCLから去らなくてはならないとは思っていなかっただろう。まだ前半の18分なのだから。ピレスに変わって、控えのアルムニアが投入された。しかし、急な出来事で彼はアップしていない。さらにいきなりロナウジーニョのFKだ。

ここでアーセナルはどうするのか。元々アーセナルが勝つには、得点効率を良くしていくこと(つまり少ない攻撃回数でも得点を挙げていく)しかなかったのだが、さらに守備に力を入れなくてはならなくなってしまった。ますますアンリにかかっていく負担が増える。そしてサイドのリュンベリとフレブにも攻守の切り替えのときに素早いオーバーラップが求められ、体力的に厳しい戦術を取らざるを得ない。

さて、一連の退場騒ぎも収まり、いよいよロナウジーニョのFK。ここで失点してしまっては、レーマン、ピレスが浮かばれない。アーセナルは勝利のためにも、ピッチを去った選手のためにも何としてでも失点を防がなくてはならない状況だ。FKなどはそれほど入らないとは言え、緊張の一瞬だ・・・外した!ロナウジーニョの蹴ったボールは、枠の外へと逸れていった。

さて、アーセナル、どう試合を運んでいくか。