皇族問題

あくまで私的考察にすぎないことを先に宣言します。
最近、皇族問題、特に女系天皇容認の議論が活発化している。本日、小泉首相の私的諮問機関である有識者会議から天皇制に関する重大な提言がまとめられ、提出された。内容は女性・女系天皇の容認がメインだ。現在、今上天皇はまだ健康であるが、かなりの高齢であるため、昭和天皇のように長く在位することはないだろう。とすると、次の天皇が誰になるかが重要になってくる。天皇の順番は基本的に男子の直系が優先だが、直系に男子がいない場合には直系以外に即位する資格が与えられる。現在の皇太子は今上天皇・皇后の直系男子なので問題はないが、その次の世代、つまり皇太子が天皇に即位したときに、直系に男子がいないこと(そして今後男児が生まれる可能性が低いこと)や皇族全体で若い男性が少ないことを考えると、象徴天皇制の崩壊すら危ぶまれるということになっている。そこで提案されたのが女性・女系天皇の容認だ。現在の皇室典範では男子以外の即位を認めていない。それさえ改正して女性・女系天皇を認めさせれば、象徴天皇制が崩壊することはまずありえない。

しかし、それで良いのだろうか。自分は賛成できない。そもそも天皇制というものは、日本に現存している最古の伝統と言っても過言ではない存在である。そして(恐らく存在していないけれど)神武天皇から数えてみても、今まで女性天皇は8人しかいない。推古・皇極・斉明・持統・称徳・孝謙・明正・後桜町である。このうち2人が重祚しているので、実質的には6人だ。しかも今までの女性天皇は、次の男子が即位するまでのつなぎとしての役割を果たすために臨時に即位したものであって、決して資格的に当然であったわけではない。つまり、天皇家が始まって以来2700年近くたっていることになっているが、その伝統の中で男系天皇制度は堅持されてきているのである。その伝統を一時の騒動で、しかも一年しか会議していないという状況下で法案として成立させるというのはあまりに歴史を軽んじているとしか言いようがない。確かに天皇制を廃止するわけにはいかないので、女性天皇を認めることはやむを得ない措置である。しかし、直系の第一子優先、つまり「直系の第一子が女性であった場合には次期天皇第一候補は女性になる」という方針は断じて認めることは出来ない。その方針が皇室典範に盛り込まれた場合、女性天皇が続出することになってしまうからだ。決して女性に天皇としての能力がないとかそういうことを言っているのではない。伝統を踏みにじるなと言っているのだ。現在の状況では、少なくとも女性天皇だけ認めていれば、象徴天皇制は十分に守られる。よって皇室典範の改正は最低限に留めるべきである。

また、男女平等理論に立った女性・女系天皇容認の考え方もあるかも知れないが、それは大いなる間違いだと思う。そもそも、皇族と我々一般国民は違うという認識を持たなくてはならない。敗戦によって天皇大権や階級制度が廃止されたことで、日本国民からの求心力は失墜したとは言え、皇族はやはり特別な存在なのである。天皇家全ての歴史をその一身に背負っているのであるため、また日本国の象徴としての責任を負っているため、皇族は軽々しい行動を禁じられているのであり、だからこそ、一般人出身の皇太子妃の体調が長きに渡って公務に差支えが出るほどに悪化するのである。そのような一般国民とは違った存在である皇室に、世間の理想を持ち込むのは間違っている。一般社会では男女平等は大いに推進されるべきであって、逆に性差別はなるべく早期に排除しなくてはならない。しかし、皇室においては世間の流れや理想よりも歴史と伝統を重視すべきである。皇室は常に保守的である必要があるのだ。

国民の意見としては女性・女系天皇容認派が多いようだが、そもそも上の理由から皇室典範の改正問題を国民に問うべきではない。強いてあげるとすれば、皇室と国会議員、歴史学者や法学者くらいが議論する資格を持つ。小泉改革郵政民営化族議員の排除など、日本の旧態を大きく変えており、自分自身も改革自体には賛成だが、皇室問題にだけは反対だ。来年の通常国会に法案が提出された場合には、国会議員の歴史と伝統への理解ある態度を期待したいものだ。