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文部官僚現役教員制
「教育は国家百年の大計」という言葉がある。文字通り、「現在の教育状況が100年後の国
家に影響力を持つ」という意味である。だから、学習指導要領を改めた小泉内閣は善きも悪
しきも歴史に名を残すことになるだろう。しかし、今言いたいのは教育が国家に与える影響
についてではない。現在、教育行政を司っているのは文部科学省である。そしてその文科省
に勤める役人は、国家公務員第1種試験を潜り抜けてきた(希望の省庁にはつけなかったかも
しれないが…)エリートである。いわば日本トップレベルの優秀な頭脳が集まっているわけ
であるが、しかし、教育は頭の良い人間を集めれば上手くいくような簡単なものではないの
である。それは、東大卒の先生が、予備校ならいざ知らず、学校現場で必ずしも上手く授業
を行えていないことでもわかるだろう。学校の教師に求められる能力は学問のレベルだけで
はないのだ。そして教育行政とは全国津々浦々に存在する無数の学校を統括することであ
る。教育行政の役割は、制度という面において教育をより良くしていくことにあるが、現場
を知らないエリートに何がわかるだろうか。彼らからすれば、学校は単なる制度に過ぎない
かもしれないが、現実には人間と人間がぶつかり合う、生きている現場であって、決して制
度ではないのだ。むしろ、現場から制度は存在するといえる。現在、学校においてさまざま
な問題が発生しているにもかかわらず、政府が有効な対策を取れない根本的な原因はこうい
うところにあるのではないだろうか。踊る大捜査線の有名な台詞に「事件は会議室で起こっ
ているんじゃない、現場で起こっているんだ」というものがあったが、まさにそれと全く同
じことが言えるだろう。結局組織は現場の積み重ねで生まれるものであるということを理解
せずして、問題を解決しようとするのは不可能である。