琉球・沖縄風土記‐交通編‐

3泊4日で沖縄に行ってきた。今回はそのことを旅行記のようにまとめておきたいと思う。しかし・・・正直3泊では足りない。本島だけでも5泊、その他の島嶼を入れれば10日程度は欲しいところだ。観光地を回るだけならば大したことはないのだが、沖縄の自然、文化、生活を知るためには十分に時間と金が必要だ。今回は3日でわかった限りのことをここにまとめたい。

沖縄はもともと琉球王国という独立国家、あるいは半独立国家であったため、日本とは文化的に大きな差異がある。それを今回は度々感じることが出来た。一方で、やはり沖縄が日本に編入されてから120年以上、アメリカから返還されて30年以上が経過することから、日本と価値観を共有している面も見られる。

沖縄で最初に文化の違いを感じ、驚かされたのは、ドライブマナーだ。沖縄人は進路変更のときに積極的に道を譲ってくれる。これは本土、特に東京や大阪などの大都市では考えられないことである。大阪などは日本で最悪のドライブマナーを持つ都市であると思うが、それと比べるともはや外国であるといえるほどの違いがある。

何よりも、本土では道路を我が物顔で走っているタクシーが優しい。進路を譲ってくれた車の半数がタクシーであったように思う。東京では急発進、急停車、割り込みが当たり前であるというのに。運転精神に関しては沖縄のタクシーは素晴らしいものであるといえる。

ただし、沖縄のタクシーで困ったことは、客引きを行うということだ。これは逆に東京では見られない現象である。ホテルの前に車を止め、出てくる観光客を相手にタクシーに乗るよう薦めてくる。近くに行くだけのときは、しばらくついてこられたりすると不快な思いをする。しかも進めてくる場所が風俗店であったりキャバクラであったりするから余計に不愉快だ。行かないとわかると「何だお前は」という感じで去っていくのもいただけない。

これは観光で成り立っている地域の特色なのかもしれない。廣瀬によるとタイでも同じような光景が見られるという。なるほど観光客相手の仕事というのは、同じ文化を共有することになるのもうなずける。しかし、それに慣れていないものからすると、邪魔であるといわざるをえない。しかも今回はレンタカーであったので、余計にタクシーなど必要ではなかったのだ。

タクシーの話はここまでにしよう。沖縄の運転に関して、驚くことの二つ目は、制限速度を遵守する点である。これまた東京では考えられない。東京では制限速度に10〜20キロ加えた速度が事実上の制限速度になっているように感じられるが、沖縄では速度表示そのものが事実上の制限速度であることが度々ある。

40キロの道では40キロ、50キロの道では50キロだ。時には40キロの道で30キロで走っていることがある。東京の感覚からすると、そして観光客には時間が無いことを考えると、これはもどかしいことであるのだが、見習うべき点である。もちろん、那覇の表通りはそうとは言い切れない。表通りでは東京と大差は無い。さっき書いた進路変更に対して寛容である点を除いて。

ただし、そこにも留意しなければならない点がある。それは観光客が多いという点である。沖縄の道路を走っていると、レンタカーが異様に多いことに気付く。そして、マナーが悪いのは大抵レンタカーなのだ。沖縄に来て、本土の感覚で走るから、自然相対的に運転が荒くなる。こちらからすればそれはむしろ普通に感じられるのだが、それもよろしくない傾向だ。もちろん自分たちを含めて。

沖縄には長らく鉄道が無かった。数年前にモノレールの「ゆいレール」が出来て沖縄初の鉄道(モノレールは鉄道に含まれるのか…?)となったが(戦前には軽便鉄道が存在したが、戦後廃止)、沖縄はやはり車社会である。自動車が無いことにはどこにも行くことができない。そのため、沖縄の主要道路は常に渋滞している。

そして、車を毎日使う状況下で、自動車税やガソリンを節約するためか、軽自動車の割合が高い。2車線の道路で、前後左右を車で囲まれたときに、全て軽自動車であったことがあった。これもまた、沖縄で生きるための知恵であるのだろう。普通の車はレンタカーが多い。また、原付やバイクも多かったように思える。東京のように電車の駅が近く、大抵の場所に電車で行くことの出来る大都市とは全く状況が異なる。

しかし、同じく鉄道交通網の発達していない東北などとはまた状況が異なるように思えた。東北地方では軽自動車はそれほど多くないのではないか。これは東北に何度か行ったときの記憶を何となくたどってみただけであるので、正しくないかもしれないが、東北は軽自動車が沖縄ほど多くないように思えた。これは、沖縄本島がそれほど広大ではないのに対して、東北地方は広く、自然走行距離が長くなることを考えれば納得できる。沖縄本島糸満から国頭まで行っても100キロちょっと(だった気がする)であるが、東北では八戸から秋田まで200キロ(だったか…?)はある。

軽自動車の性質がどうであるかはわからないが、長距離には向かないのであろう。逆に短距離であり、それほどスピードを出さないのであれば軽自動車のメリットは大きい。そう考えれば、沖縄に軽自動車が多いのは当たり前のことであるかもしれない。

それから、沖縄の車はウィンカーをあまり出さない。とはいえ、大阪ほど酷くは無い。進路変更や左右折のときにウィンカーを出さないというのは西日本の一般的な傾向なのだろうか。とにかくウィンカーを出さないのだ。左折・右折のときは、特にその専用レーンに入っているときは、ウィンカーを出さなくともこちらに被害は無い。しかし、進路変更のときに出さないというのは実に危なっかしい。これは由々しき問題だ。

また、サンキューハザード(?)もあまり行われていない。車線を譲ってもらえたときなどにハザードを2〜3回つけるあれである。ドライバーが手を挙げて感謝の意を示すことはあるが、サンキューハザードはしない。この方が人間的だと思えるが、少々戸惑うことがあった。これもまた、サンキューハザードを出すのはレンタカーが多い。もしかしたら、意味が伝わってなかったかもしれない。

車といえば、我がレンタカー。車種は日産のマーチ。我が家の車はトヨタアルファードなので、目線が高い。マーチは普通の車なので、いつもと違った目線に少々戸惑った。何だか地べたを這いずり回っている気分がした。でも、足元が見える安心感がある。色はベージュ。出来れば隣の人が乗っていったキューブが良かったのだが、その辺は安いプランであるせいか選べなかったらしい。キューブ・・・乗ってみたかった。。。

気分を取り直して運転の順番だが、最初は自分が行くことにした。自宅以外で、自車以外で運転できる絶好の機会だったので、立候補した。カーナビも付いているし、大きな問題もあるまいという判断だった。それが甘かったということは、走り出し1分で判明することになる。

カーナビが腐っていたのだ。レンタカーを借りた駐車場から出て5メートル、カーナビは『右折してください』といった。(なるほど右折だな)と思い、カーナビの指示に従おうとウィンカーに手をかけたその時、目の前に信じられない光景が広がっていた。

右折するためには、中央分離帯を乗り越え、そこに生える無数の木々を戦車さながら引き倒して行かなければならなかった。一体これはどういうことなのか。とりあえず右折は急遽取りやめることとして、左折することにした。左折先もかなり渋滞していたのだが、早速沖縄のタクシーは左折しようとする我が車を快く入れてくれたのだ。沖縄人の優しさに感動した瞬間だった。

しかも、助手席に座ったのが廣瀬という悲劇。なぜお前がそこに座っている・・・前田くん座ってくれ!と思ってもあとの祭り。腐ったカーナビと免許不保持の助手席、そして発の沖縄の道。これほど不安なことは無い組み合わせ。